和牛について

和牛とは

すき焼きの画像
写真:すき焼き

和牛とは、明治時代以前からの日本在来の牛と日本国外の品種の牛と交配して作られた品種群のことです。
高級肉料理で取り扱われている和牛は、焼肉やしゃぶしゃぶ、すき焼きなど多岐に渡ります。

品種は4種類で、黒毛和種・褐毛和種(あかげわしゅ)・日本短角種・無角和種となっています。

1976年に米国コロラド州で研究目的として連れていかれた和牛が続々と他の国々に流失、オーストラリアやアメリカで多品種と賭け合わせた”混合牛”が海外では和牛として日本産よりも多く流通をしている為、日本政府によって本物の和牛を区別する為の公式認定を行っています。

和牛の歴史

黒毛和牛の画像
写真:黒毛和牛

日本と牛の歴史は古代にまで遡ります。
鎌倉時代には国産の牛を図説した書物『国産十図』が書かれ、国産牛の産地による牛の特徴の違いが意識されることとなりました。

江戸時代になると中国地方にて積極的に近親交配を行わせており、そこで『蔓(つる)』と呼ばれる系統が開発されました。
当時の日本は肉食が忌まれ、牛肉を食べる文化が広まっておらず、健康で人の言うことを良く聞いて働く牛が好まれており、その点において蔓牛は優秀で、非常に高い値で取引をされることとなりました。

1912年には、産まれた牛の性質を見極めて優れた牛を増やしていくという品種改良が積極的に行われることとなりました。
各地の日本牛をベースとすることになりましたが、既に外国牛の血と混ざっているし牛が多く、純粋な日本在来牛という訳ではありませんでした。
そこで、これを『改良和種』と名付け、日本在来牛と区別することになりました。

改良が続けられ、1944年には「黒毛和種」「褐毛和種」「無角和種」の3品種に区別され、総称を『和牛』としました。
1957年には日本短角種が追加をされ、現在の和牛4品種が出揃うこととなりました。

現在でも、日本の牛のほとんどは外国品種との交雑種となっていて、純粋な在来種は「山口県萩市の見島牛」と「鹿児島県十島村の口乃島牛」の二種のみとなっており、見島牛は国の天然記念物にも指定されています。

日本では主に牛は『役牛』として耕作と運版が主な仕事だったが、20世紀にはトラクターとトラックにとって変わられることとなりました。
そして高まる牛乳の需要に和牛は答えることが出来ず、より乳量の多い外国産のホルスタイン種がメインとして飼われていたので、役肉兼用だった和牛は1960年代には食肉専用へと変わりました。

役牛としては有利では無かった和牛の特徴は肉専用となると見方が変わり、多品種の牛肉では味わえない柔らかさと旨みがあるということで、更に品種改良が進められることとなりました。

1991年には牛乳の輸入が自由化、安さでは外国産牛肉に対抗出来ないと知り、脂肪交換がしやすい黒毛和種を高品質・高価格の食肉用として生産することになりました。

和牛の種類

和牛の画像
写真:和牛

公正競争規約の制度に基づいて、食肉業界が作って公正取引委員会が認定をした「食肉の表示に関する公正競争規約」第10条の施行規則によって、和牛の表記が認められている種類を以下では紹介します。

①黒毛和種
毛色が黒単色に褐色を帯びており、体の下部と四肢内側が淡く、鼻鏡、蹄、舌も黒くて角なのが特徴の肉牛。
体型は小型ではありますが、肉質は他の和牛のみならず、世界の牛肉と比べても世界最高と称されています。
日本国内で飼育されている肉用種の80%以上がこの種であるとされています。

②褐毛和種
肥後のあか牛と土佐のあか牛に代表をされる黄褐色単色の毛色が特徴の肉牛。
熊本系の毛色は黄褐色単色で体下部、四肢内側、眼、鼻の周辺が淡く、高地形は「毛分け」と称される角、蹄、眼瞼、下、尾房、肛門などが黒い牛が好まれる。
黒毛和種に比べても大きい。
筋繊維がやや太く、脂肪沈着も黒毛和種には劣りますが、耐暑性と粗飼料利用性に優れており、健康にいいエネルギーバランスなのが特徴です。

③日本短角種
毛色は濃赤褐色単色、鼻鏡、蹄、角は飴色、有角であることが特徴の肉牛。
体格は他3品種の和牛と比べても大きいとされていますが、中躯の長さに比べて後躯が寂しいものとなっています。
褐毛和種と同じく筋繊維の粗さと脂肪沈着が黒毛和種に劣っています。

④無角和種
毛色は黒単色、鼻鏡、蹄も黒いこと、そして品種名の通り「無角」であることが特徴の肉牛。
体型は黒毛和種と同じく小型で、中躯は長めで短肢なことが特徴となっています。
早肥早熟で粗飼料の利用性に優れていた無角和種は1963年に約10,000頭が飼養されることとなりましたが、市場のニーズが霜降り肉へと変わってしまったことで、霜降り部分が少ない肉質であった無角和種は飼育数が250頭までに減少、絶滅が危惧され放牧地『無角和種の郷』が開設、2018年時点で約200頭が飼養されています。

主な和牛はこれら4種類となっていますが、他にも和牛4種類の交配によって産まれた交雑種と、その交雑種と和牛4種類の交配によって産まれた交雑種も和牛として定義されます。

和牛の品種とブランド

現在の日本で肉用として飼われている牛はほとんどが和牛で、更に和牛のほとんどは黒毛和種となっています。
何故黒毛和種が主流となっているのか?
黒毛和種は外国多品種には無い「霜降り肉になりやすい」という性質があるのです。

現在の4種類の和牛それぞれの日本での飼養頭数は以下の通りです。

・黒毛和種:159万4千頭
・褐毛和種:20万400頭
・日本短角種:数千頭
・無角和種:200頭

他にも、産地ごとに肉質の良さを謳った牛を『ブランド牛』と呼び、有名なもので『神戸牛』と『松坂牛』があります。

人気のブランド牛

霜降りの牛肉の画像
写真:霜降りの牛肉

・神戸ビーフ(こうべビーフ)
海外でも非常に評価の高いブランド牛。
2009年にはキャビア・フォアグラ・白トリュフと言った世界で最も高価な9種類の食べ物の一つにも選ばれました。
他のブランド牛と比べても肉質が非常に柔らかく、ふんわりとした触感が特徴です。

・松阪牛(まつさかうし)
三重県で生産されている黒毛和牛の中でも、最高品質とされているブランド牛。
「まつざかぎゅう」「まつさかぎゅう」「まつざかうし」などの呼び方がありますが、正式な呼び方は「まつさかうし」となります。
きめ細やかな霜降りと柔らかな肉質、ふわっと香る甘みが特徴で、ステーキとして調理するなら神戸牛にも劣らないとされています。

・近江牛(おうみぎゅう)
約400年にもなる歴史があるとされている日本で最も歴史のあるブランド牛。
戦国時代には豊臣秀吉に由来した逸話もあります。
肉質はきめ細やか、脂肪の甘さも絶妙な柔らかいお肉で、すき焼きやしゃぶしゃぶで食べることがおすすめされています。

・米沢牛(よねざわぎゅう)
山形県にある置賜(おきたま)地方の3市5町で飼育をされている黒毛和牛を表すブランド牛。
30か月以上の長い期間育てていることから、肉の赤身に脂身が浸透していて、口の中でとろけるような食感が特徴となっています。

以上の4つのブランド牛は、全ての牛が「但馬牛(たじまうし)」がルーツとされています。
但馬牛は、兵庫県北部の但馬地方から淡路島までの兵庫県内で生まれ育った牛のことで、日本三大和牛を始めとした有名銘柄牛の85%以上が但馬牛の血が流れていると言われています。

その他のブランド牛

飛騨牛・ステーキ肉の画像
写真:飛騨牛・ステーキ肉

・前沢牛
岩手県奥州市前沢で飼育をされた黒毛和種が、一定の企画を満たした場合にのみ呼称を許されるブランド牛。
岩手ふるさと農業協同組合の登録商標でもあります。

・飛騨牛(ひだぎゅう)
岐阜県飛騨地方で肥育されている黒毛和種の和牛に呼称されるブランド牛。
飛騨牛は食肉になる前の牛を「ひだうし」、食肉になった後には「ひだぎゅう」と呼ばれ、呼び方により成長の度合いを表しているのが特徴となっています。

・仙台牛
全国で唯一、肉質等級の中でも最高の「A5ランク、B5ランク」に格付けをされないと呼称が許されないとされる高級ブランド牛。
宮城県特別表示認証食品に認定をされており、地域団体賞表示も取得済みとなっています。
定義の困難さから、流通量を確保すること自体が困難となっている誰もが認める高級肉牛として非常に有名です。

和牛は日本の高級グルメ代表

和牛は外国の方にも自信をもっておすすめをすることが出来る非常に美味しい日本のグルメで、黒毛和種は世界最高の肉質と称されています。