盆栽について

盆栽とは

庭園に草木を植えたり植木鉢やプランターを用意して花や樹木を栽培したりする園芸は、世界中に愛好家がいる人気の趣味です。
しかし、ここで紹介する日本の盆栽はこういった園芸とは少し違った独自の文化です。

盆栽は木や草、苔などの植物を盆栽専用の鉢に植えて、その枝ぶりや幹の肌の造形、根の張り方、全体のデザインの美しさを鑑賞するという趣味です。
盆栽の世界は奥深く、中には数千万円や一億円を超える値段がつく作品もあるのです。

盆栽の歴史や成り立ちとは?

盆栽の歴史は、中国の唐の時代におこなわれていたという「盆景」にまでさかのぼります。
古い時代から中国で盛んにおこなわれていた盆栽は、日本には平安時代頃に伝わりました。
この時代には、日本の盆栽は「盆山」「鉢木」「作りの松」などと呼ばれることもありました。
鎌倉・室町時代になると盆栽は日本の武士の趣味として人気を集めるようになりました。
そして、江戸時代には庶民も盆栽を楽しむようになったといいます。

明治時代以降の日本では、多くの盆栽業者が東京都文京区の小石川で盆栽を作っていました。
しかし関東大震災で被災したのをきっかけに小石川で盆栽を作ることができなくなります。
そこで盆栽業者の多くはさいたま市に移住し、盆栽を作り続けたといいます。
現在でも埼玉県さいたま市北区盆栽町では多くの盆栽業者が活躍しています。
同地域にはさいたま市大宮盆栽美術館があり、芸術性の高い盆栽の数々を心ゆくまで鑑賞できます。
ほかに、埼玉県川口市安行地区や香川県の鬼無地方なども盆栽の産地となっています。
これらの地域には盆栽の専門店がいくつもあり、盆栽に関するイベントも開催されます。

盆栽はいまや世界中で愛されている!

盆栽の愛好者の多くは日本の熟年層や高齢者と言われてきました。
若い人が盆栽の趣味を楽しむことは少なく、昭和期には盆栽は渋く年寄りくさい趣味といわれることもありました。
しかし、平成の時代になると盆栽の斬新さやスタイリッシュさが見直され、若い人も盆栽を楽しむようになってきました。
じっくりと時間をかけて1つの植物と向き合うことを楽しいと感じる若者が増えているのが、盆栽が流行している理由といえるでしょう。
また、凛としたスタイルの盆栽に癒しや親しみを感じる方も多いようです。
また盆栽は世界の国々からも注目を集めるようになり、現在は海外でも「BONSAI」といえば伝わるほどになりました。

盆栽にはどんな種類がある?

盆栽のほとんどは、盆栽鉢の中に和風の木を育てるというスタイルで作ります。
その中でも特に人気を集めるのは松をはじめとした松柏(しょうはく)盆栽です。
松や杜松(ねず)、真柏(しんぱく)、杉などの松柏類は、盆栽に特によく使われます。
松柏類以外の盆栽は雑木と呼びます。
雑木には実物や花物など、いくつもの種類があります。

実物:実がなる植物ならばウメモドキや柿、姫リンゴなどの品種が人気です。
花物:花が咲く植物としてはウメやボケ、桜(さくら)やサツキが盆栽として育てられます。
葉物:葉姿を鑑賞する盆栽には椛(もみじ)やカエデ、ケヤキ、ハゼノキなどがあります。

ほかにも、草を中心としたものや苔の風情を楽しむもの、いくつかの植物を組み合わせた寄せ植えの盆栽、ドライ盆栽(枯れ盆栽)などを愛好する方もいます。
盆栽にはオーソドックスなものだけでなく少し変わった種類のものもあるので、お好みの名品を見つけてみましょう。

盆栽にはどのような樹形がある?

植物の自然な樹形を楽しむのは盆栽の醍醐味の1つです。
盆栽の樹形にはたくさんの種類があるので、ここでは特に人気が高い樹形についてご紹介します。

直幹(ちょっかん):木の幹が上に向けて一直線に伸びているバランスの良い盆栽です。
模様木(もようぎ):幹が左右に曲がった変化のあるスタイルの盆栽です。
斜幹(しゃかん):風にさらされたり障害物があったりしたために斜めに立ち上がった樹形の盆栽です。
吹き流し:斜幹よりもさらに激しく幹や枝がなびいて、枝が樹高よりも長くなった盆栽です。
懸崖(けんがい):断崖絶壁のように下向き枝に垂れ下がったデザインの盆栽です。
箒立ち(ほうきだち):幹の途中で枝が放射状に分かれた、ほうきの形のような盆栽です。
蟠幹(ばんかん):幹がねじれて蛇がとぐろを巻いたような形の盆栽です。
根上り(ねあがり):根本が表の土部分から浮き出して露出した状態の盆栽です。
多幹(たかん):根本から複数の幹が立ち上がった盆栽です。
根連なり:三本以上の木が長い年月をかけて癒着し、1つにつながった盆栽です。
文人木(ぶんじんぎ):中国の絵画のような樹形が特徴的な盆栽です。
石付(いしつき):鉢の中の石に根を這わせるようにして植え付けた盆栽です。
寄せ植え:いくつかの木を1つの鉢に植えたタイプの盆栽です。植物以外の造形物と合わせて芸術性を高めることもあります。
変わり木:どんなカテゴリーにも当てはまらない自由な樹形の盆栽です。制約がないため整えるのは難しいですが、オリジナルの味わいが生まれやすくなります。

盆栽の形を悪くする「忌み枝」とは?

盆栽にはデザイン性を高める枝だけでなく、デザインを悪くする不要な枝もあります。
盆栽の形を悪くする枝は、忌み枝と呼ばれます。
忌み枝にはいくつかの種類があります。

逆さ枝:下側に向かった枝や、幹の方に向かった枝のことです。
幹切り枝:幹の前を左右に横切って、盆栽の美しさを損ねている枝のことです。
突き出し枝:木の正面に向かって突き出している枝です。

忌み枝があると盆栽全体のバランスが悪くなるだけでなく、風通しや日当たりが悪くなって盆栽の成長をさまたげることもあります。
そのため、盆栽に忌み枝があるときには形を整えるための剪定をすることになります。
当たり前ながら、一度切ってしまった枝はもとに戻すことができないため、切る場所をじっくりと考えることが重要です。
こういった忌み枝を上手に切って盆栽を整えれば、盆栽の美しさはさらに高まります。

盆栽の作り方やお手入れの仕方とは?

盆栽は、屋外でみられる大木の姿を鉢の中に縮小して再現することを目指す趣味です。
森の中や風流な庭園に大きな大木が悠然と生えているかのように、盆栽も美しく凛とした姿に仕上げていきたいものです。

盆栽のお手入れをするためには、剪定用の盆栽ばさみや針金などが必要です。
余分な忌み枝があるときには、はさみで丁寧に切り落せば洗練された姿になります。
また、目立ちにくい場所に針金を使って枝を固定したり、針金掛けという技巧で枝を少しずつ屈曲させたりすることもときには必要となります。
もちろん、盆栽には適切な量の水やりをし、肥料を与える施肥をしておくことも大切です。

盆栽は年月とともに根が太くなるため、鉢の中で水を通しにくくなったり通気性が悪くなったりするものです。
健康的な盆栽を育てるためには、数年に1度の鉢の植え替えが必要となります。
時間をかけて丁寧に盆栽の世話を続け、自慢の名品を作り上げましょう。

高級な盆栽とはどんなもの?

盆栽は、銘品と呼ばれる高級なものであれば樹齢100年から300年にもなるといわれます。たとえば、素晴らしい盆栽としてよく知られる「青龍」と名付けられた五葉松は、樹齢350年にもなるといわれています。
ひと昔前までは、盆栽というと長い時間をかけて枝ぶりを育てていくものというイメージがありました。
しかし最近では盆栽の促成栽培の技術が向上したので、数年間でも芸術的な盆栽に仕上げられるようになっています。
樹齢の長い盆栽はやはり高額ですが、美しい盆栽の中には意外とリーズナブルに購入できるものもあるのです。
盆栽を鑑賞するときには、見た目だけでなく樹齢などの詳細もぜひチェックしてみましょう。

盆栽を趣味として楽しみたい!育て方をチェックしよう

盆栽は近年、じっくりと腰を据えて楽しめる趣味として人気を集めています。
しかし、盆栽に興味をもったものの、どういった盆栽を初めに購入すればいいのか分からずお悩みの方もいるかもしれません。
盆栽は高級品ばかりと思われがちですが、気軽に始められるセットもたくさんあります。
初心者はまず入門用の安い盆器や盆栽を購入し、道具を揃えながら盆栽を楽しむのがおすすめです。
盆栽の本体とお手入れ用の道具や肥料などの商品は、専門店のほか、園芸店やホームセンター、インターネット通販などで購入できます。

日本の観光地ではお土産としてミニ盆栽や苔玉の盆栽も販売されています。
こういった盆栽を購入したのをきっかけに、盆栽の魅力に気づくということもあるかもしれません。
植物を育てるのが趣味という家族や友人がいるのなら、盆栽をプレゼントとして贈るのも喜ばれることでしょう。
ギフト用の盆栽もたくさん販売されているので、ステキなものを選んでみてくださいね。