侍・武者について

侍・武者とは

かつての日本には、武士と呼ばれる身分の方が多く存在しました。
現代でも、日本の時代劇や大河ドラマ、映画、漫画、ゲームなどには多くの侍・武者を見ることができます。
また、野球の日本代表は侍の強く凛とした姿にあやかって「侍ジャパン」と呼ばれます。
侍や武者のかっこいい姿は国内だけでなく海外からも高い人気を集めているのです。
しかし、そもそも日本の侍・武者・武士とはどのような身分呼称なのでしょうか?

侍・武者とはもともと、地方の有力貴族をはじめとした貴人に仕える官人のことを指していました。
武者や武士の「武」という文字には、「矛(ほこ)を取って戦いに赴く」という意味があります。
侍(サムライ)は「侍ふ(さぶらふ)」という日本の古語に由来し、「お使え申し上げる」といった意味を持ちます。 侍は別名「もののふ」と呼ばれることもあります。

侍・武者の歴史や発祥、成り立ちとは?

日本の武士の身分制度の始まりは10世紀頃、日本独自の文化である国風文化が成立した時期のことです。
平安時代に貴人や朝廷に仕える仕事をしながら、武芸を家芸として身につけて武人として活躍する人が増えてきたことに起源を発します。
やがて侍・武者の家系では、親から子へと武芸が継承されるようになっていきます。
上級貴族に仕える武者の中でも、清和源氏(せいわげんじ)や桓武平氏(かんむへいし)は次第に大きな力をもつようになりました。
歴史の中で政情に不安が生じると、力をもつ武士の中には紛争や騒乱、領地争いを起こす者もいたといいます。
特に、源氏と平氏の対立は大きな戦乱にも発展しました。

鎌倉時代や室町時代の武者は、侍と呼ばれることも多くなっていきました。
この時期になると源氏や平氏の子孫や諸流、そして藤原氏の子孫などが力を持つようになります。
室町時代以降には多くの侍・武者が活躍するようになりましたが、武士の中にも複雑な身分階級の差も生じていたといいます。これが原因で南北朝時代・戦国時代には多くの戦乱が起こりました。

江戸時代に入ると、戦国時代のような気風の武士は公秩序に反するという考え方が一般的になり、徳川家綱が戦いを禁止します。
これにより、江戸時代の武士は戦って誉れ(ほまれ)を挙げるこれまでのスタイルとは違い、義を重んじる「武士道」の思想を持って活躍するようになっていきました。
江戸時代の身分制度に「士農工商」というものがありますが、これを見ても江戸時代の武士の位が高かったことが分かります。

江戸時代が終わり近代化が進む中で、武士の多くは士族という身分になり、戦国時代に活躍したような軍事的な武士の身分は消滅したとされます。
しかし、武士道という日本伝統の考え方は今でも日本人の心に継承されています。
現在でも、武士は文学や芸能、エンターテインメントの業界で描かれる日本特有の文化として、多くの人に愛され続けています。

どんな種類の侍・武者が存在していたの?

日本では、長い時代の中で色々なタイプの侍・武者が活躍してきました。
中には、本当に存在したのか分からない侍や武者もいます。
ここでは、少し変わった侍・武者の種類やタイプをご紹介します。

青侍:貴族や公家に奉仕する、比較的身分の低い侍のことです。青色の衣を着ていました。
家人(けにん):侍の中でも、身分のある人の家臣をさします。
若武者:武者の中でも若く未熟な人は若武者と呼ばれました。
女武者:日本の武者の中には女性もいたといわれますが、本当に実在していたのかは分かっていません。
浪人:所領や職を失い、居住地を離れて別の地域を浮浪していた侍のことです。
落ち武者:戦乱で負け、そのまま逃亡した武者のことです。

日本に古来から伝わる武士道とはどんな考え方?

日本では武芸において、また武芸から離れた普段の生活においても「武士道精神」という言葉がよく使われます。
武士道というのはそもそも、武士としての理想なあり方を考えるための思想です。
武士道の考え方では、じっくりと鍛錬して武芸を身につけ、道徳的な精神を持ってものごとに臨むことが重要です。
侍・武者はかつて人と戦うことを生業(なりわい)としていましたが、人や社会を救うための行動や道徳精神も武士道と言えるのです。

武士の生き様は時代背景によって大きく異なります。
海外にも騎士道という考え方がありますが、これも日本の武士道のように時代に応じて変化してきた奥深い考え方です。
日本ならではの武士道精神を身に付けたい方は、武士について書かれた書物を読んで武士道精神について考えてみるのもよいでしょう。
たとえば幕末には山岡鉄舟が『武士道』という書物を発表しました。
5000円札の肖像画になったことで知られる新渡戸稲造も『武士道』という書物を残しています。
また、武士道に興味がある方は宮本武蔵の『五輪書』という書物にもぜひ目を通しておきたいものです。

侍・武者はどんな武器を使っていた?

日本の侍・武者というと、日本刀を腰に差して戦陣に赴く姿が思い浮かびます。
しかし、日本の侍・武者が刀を持ったのは少しあとの時代で、平安時代の侍・武者は弓矢や矛(ほこ)、槍(やり)といった武器を使っていました。

弓矢は縄文時代に獲物をとるためにも使われていた、非常に古い武器です。
平安時代の武士は竹と木を組み合わせて作った飛距離の出る弓矢を携帯していました。
京都の三十三間堂と呼ばれる寺院には、特徴的な縦長のお堂があります。
お堂には4メートル間隔で柱があり、その柱の間が33あるので三十三間堂と呼ばれるのです。
この三十三間堂の南から北に向かって矢を射通し、どれだけの距離を飛ばせるかを比べるという競技が古くからおこなわれており、より遠くに飛ばせる性能の高い弓がどんどん開発されていきました。
武士や侍による合戦では、数百人や数千人といった兵が一斉に弓を放つ戦法がよく使われていました。
弓矢は日本で鉄砲が使われるようになった戦国時代に入っても、欠かせない武器の1つとして愛用されていたのです。

日本の武士は弓矢だけでなく、矛や槍も多用していました。
矛は槍のような見た目をしていますが、先端が刀のようになっておりなぎ倒すようにして使います。
槍は突きの攻撃をするためのものなので、先端が鋭く尖っています。
織田信長は、先端を前に向けて横一列に並び、相手が通れないように攻め込む「槍ぶすま」という戦法を考案し、戦場で多用したと伝わります。
1543年に種子島に鉄砲が伝来したあとは、日本の侍・武者は鉄砲を使って戦うようになりました。

日本刀の無駄のない美しいデザインに魅力を感じる方は多いものです。
日本では平安時代後期から日本刀が開発されるようになり、多くの武士が美しい日本刀を所持していました。
なかでも、豊臣秀吉が愛用したという一期一振(いちごひとふり)や、天下五剣と呼ばれる童子切(どうじぎり)、三日月宗近(みかづきむねちか)、大典太(おおてんた)、鬼丸、数珠丸といった日本刀は名刀と呼ばれ多くのファンから愛されます。
日本には村正や正宗といった腕のいい刀工もたくさんいました。
日本刀は折れたり曲がったりせず切れ味を保つために、良質の玉鋼を何度も折り返すようにして鍛錬して作り上げます。
じっくりと手間をかけ鍛錬されて作り上げられた日本刀には、独自の武士道精神が現れているといえるでしょう。

日本の侍・武者の装備とは?

侍・武者の装備は時代によって異なりますが、一般的には胴を守る鎧(甲冑)と頭部を守るかぶとで武装して鎧武者として戦っていました。
戦国時代までは、甲冑や兜は丈夫さにこだわって作られていましたが、大規模な戦闘が起きなくなった江戸時代には、武士の甲冑は見た目の豪華さにこだわって作られるようになっていきました。
日本の侍・武者の鎧兜は作りが良かったことから現代でも数多く残っており、博物館などに足を運べば気軽に目にすることができます。
また、壮大な武者絵を展示するミュージアムもあるので、ぜひ訪れてみましょう。

日本の侍・武者が使っていた武道を学ぼう!

日本の侍・武者の文化に魅力を感じる方は、侍・武者が戦いの中で使っていたという武道を学んでみるのがおすすめです。
日本には侍の武道精神を学べる古流武術と呼ばれるスポーツがあります。
武芸だけでなく戦略や礼法も学べるため、古流武術を極めれば無敵の心身を手に入れることができるといわれます。
剣道や柔道、合気道や居合道、少林寺拳法や空手道、弓道やなぎなたなど、おすすめの武術はたくさんあります。
現代ではこういった武術では相手を倒すことが必ずしも正義とはならず、相手を尊重する礼法を重視しながら技を磨いていく精神が求められます。

日本では、技術を高めていくことを「武者修行」と呼ぶことがあります。
また、強い敵を前にして勇み立って体が震えることを「武者震い」とも呼びます。
日本の武道の精神を学べば、かつて存在していた侍・武者の精神を感じ取ることができるもしれません。

日本国内で侍・武者に会えるスポットはある?

日本国内には、侍・武者が出迎えてくれる城郭や寺社仏閣が数多くあります。
たとえば愛知県の名古屋城に観光に出かければ、おもてなし武将隊が出迎えてくれます。
全国の観光地で侍や武士に遭遇したら、その地域や観光地に関する話を詳しく聞いたり、一緒に写真を撮ってもらってはいかがですか。
観光地の侍・武者の中には英語で観光案内もしてくれますよ。

日本には、侍・武者になりきって楽しめるエンターテインメント性の高い観光スポットもたくさんあります。
江戸ワンダーランド日光江戸村やサムライミュージアム、京都侍&忍者ミュージアムや東映太秦映画村では、侍の甲冑や兜を身につけたり、和服姿に日本刀を持ったりして写真撮影ができます。
また、侍の衣装をまとって日本の古い町並みを散策する素晴らしいツアーを用意している観光スポットもありますよ。

クールジャパンビデオでは日本の侍・武者の歴史や文化、武器や装備に関する動画、侍・武者になって楽しめるスポットなどの紹介動画がたくさんあります。
日本の侍・武者に興味がある方は、まずはさまざまな動画をご覧になって日本のサムライ文化を深く理解することから始めてみましょう。